「働き方改革」などで副業・兼業…
「地方を元気にする副業」市長補佐5人を採用した福山市がめざすもの
政府は副業を推進している一方で、経団連をはじめとする企業団体はいまだ副業解禁に及び腰な面がうかがえます。一方で労働者はというと、エン・ジャパンが2018年12月〜1月に実施した調査によると、「副業をしたことがある」「副業をしたことはないが興味がある」を合わせると、93%に上り副業の関心の高さがわかります。
この政府と労働者のミスマッチ状態を好機とみて動き出したのが、とある地方自治体でした。今回はその取り組みをご紹介します。
応募者400名弱に担当者もビックリ
広島県福山市では、人口減対策に悩んでいました。若者定着や女性の子育て支援に関わる施策の企画・推進ができる人材が欲しかったのですが、ただでさえ今は人材難の時代。若者事情に詳しい世代は都会志向が強く、首都圏からわざわざ広島へ転職してきてくれる人材はそうそう見つかりません。
そこで、福山市企画財政局は副業希望者の登用を思いつき、「戦略推進マネージャー」を募集しました。あくまで民間の立場から市長に助言するのが仕事ですから、副業でも問題ありません。また送り出し側の企業としても、行き先が自治体なら情報漏洩や社会的信用の面でも安心というメリットがあります。
転職サイトの「ビズリーチ」上で募集をかけたところ、応募者はなんと395名にのぼりました。ほとんどが首都圏在住の男性で、30代~40代が6割程度。本業はコンサルティング会社、製造業、金融機関などさまざまでした。当初は1人だけ採用する予定でしたが、優秀な人材が多く絞り込むのは逆にもったいないと、5人も採用することになったそうです。
副業ならではのユニークな報酬や働き方
副業が前提となっているため、週1日で月4日の勤務が原則になっています。事情によっては月1日だけの勤務も認めていて、1日あたりの報酬は2万5000円。これに加えて首都圏からの出勤の場合は宿泊費や交通費も出ます。給料は外部講師などに払うものと同じで謝金という形になっているので、正式な雇用と違って柔軟な対応をしているとのこと。
人材難に悩む地方の自治体にとって、福山市の取り組みは非常に参考になるモデルケースです。と同時に、働く側にとっても注目すべき新しい選択肢ではないでしょうか。東京に住みながら広島の役所で仕事をするなんて、以前なら考えられないことです。
このようなニュースを耳にすると、今後副業が推進されていく中で様々な働き方やキャリア形成が可能になる予感がしてきます。福山市の取り組みは、そんな希望を持たせてくれる事例です。