2018
11/13

実務解説!副業社員の労働時間管理、健康確保、労災保険


厚生労働省は「柔軟な働き方に関する検討会」を開催し、副業・兼業の促進のための議論を行い、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。

キャリア50-70

政府も前向きに取り組んでいる「働き方改革」ですが、副業や複業を解禁することにより企業側はどのような義務を負う必要が出てくるのでしょうか?今回は、副業解禁により企業が副業社員に対して負う義務について、労働時間管理、健康確保、労災保険の視点から分かりやすく解説していきたいと思います。

副業社員の労働時間数や割増賃金の支払いはどのようになるの?
ケース1:事業主Aと「所定労働時間4時間」、同一の日について事業主Bと「所定労働時間4時間」という契約を締結していたが、ある日事業場Aで5時間働き、事業場Bで4時間働いた場合。

回答:契約上は事業場Aと事業場Bを合わせて8時間のため法定労働時間内の労働となります。事業場Aでいつもより1時間長く働いたことで法定労働時間を超えてしまうので、事業主Aは割増賃金を支払う義務があります。

ケース2:事業主Aと「所定労働時間3時間」、同一の日について事業主Bと「所定労働時間3時間」という契約を締結していたが、ある日事業場Aで5時間働き、事業場Bで4時間働いた場合。

A2. 契約上は、事業場Aと事業場Bを合わせて6時間のため法定労働時間内の労働です。事業場Aでも事業場Bでも契約時間以上働いていますが、事業場Aの5時間終了時点では所定労働時間内です。一方事業場Bで4時間働くことにより、事業場Bで1時間法定労働時間を超えてしまうため、事業主Bが割増賃金を支払う義務があります。

副業社員の健康診断はどうなるの?
所定労働時間の4分の3以下の短時間労働者は労働安全衛生法第66条第1項に基づく健 康診断の対象とはなりません。副業・兼業することにより複数の事業所での合計が所定労働時間の4分の3を超えてしまう場合でも、それぞれの事業主に健康診断の実施義務はありません。

副業社員の労災はどのように給付される?
副業の場合の労災保険給付額は、労働災害が発生した勤務先の賃金分のみに基づいて計算されます。事業場Aでの勤務終了後、事業場Bへ向かう途中に災害にあった場合は、事業場Bへの通勤途中での災害とみなされるため、会社Bの労災保険を使用して保険給付を受け取れます。

以上、少し複雑なケースに関して企業が負うべき義務について述べてきました。すべてのケースにおいて、企業が従業員の副業または複業について把握していることが前提となっています。採用の際は必ず副業・複業の有無を確認した方がよいでしょう。


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