日本では「副業・複業」が新しい…
日本もこうなる!?「欧米の副業事情」【イギリス・後編】
「欧米の副業事情」ということで、海外の副業に関する現状を国別にご紹介するシリーズ。イギリスの現状について、前編では副業人口、就業形態、職種について見てきました。後編では、法令・制度、労働時間・健康管理の考え方、そして社会保険について取りあげます。
法令・制度
副業に関する法令としては「明示の特約がない限り、原則として、雇用主は勤務時間外の自由時間において労働者が就労することを制限できない」というものがあります。雇用主が副業を禁止または制限できるのは、基本雇用主の事業に損害を与える場合、つまり競業の場合です。雇用契約に条項としてその旨を盛り込むことができますが、法的規定ではありません。
イギリスの助言・斡旋・仲裁局ACASは、一般論としてですが、雇用主が雇用契約で競業の予防や過度の就労に伴うパフォーマンスの低下を防ぐことを目的に、副業を制限することは可能との見解を示しています。加えて、雇用契約に条項として書かれていない場合でも、事前通告なく副業した場合、雇用主は信頼と信任に反しているとみなす可能性がある、とも言及しています。
労働時間・健康問題
労働時間は、EU労働時間指令に従い、週当たりの労働時間の上限は48時間と定められています。労働者が適応対象外である場合、もしくは適用除外に合意した場合を除き、雇用主には、労働時間の上限の守るため必要なあらゆる合理的な措置を講じることが義務付けられています。適用除外の合意に関しては、合意の強制や、合意しないことに基づく不利益取り扱いは違法とされ、解雇の場合は不公正解雇と判断されます。副業・兼業の場合も通算の労働時間が規定の対象で、各雇用主が責任を負うことになっています。
社会保険
イギリスの社会保険制度は、年金、疾病、出産、失業、労災等を包括した給付制度からなる国民保険です。加入は雇用ごとで、各雇用における給与額が所定の額を上回る場合に、各雇用主が労働者分と併せて保険料を納付することになっています。これは複業している場合も同じです。
支給については、失業前の賃金 に因らず定められた額を基準に支給額が決められており、複業・副業の場合でも基本的に支給額には影響しません。例外として、法定出産給付および法定傷病手当は雇用ごとの支給となっており、副業の場合は複数の雇用者からの受給が可能です。
以上、イギリスの副業事情でした。次はフランスの事情についてご紹介します。