2021
07/30

【50代の転職 賢人インタビュー】キャリアコンサルタントが語る① 中高年層の転職を取り巻く実情とは


キャリアコンサルタントの本音第1弾

私たちは今、時代の大きな転換点にいます。コロナ禍でダメージを受けた業界も多く、一時期は失業率の増加や有効求人倍率の低下が深刻な状況に陥りました。

経済状況は少しずつ回復の兆しも見え始めましたが、転職業界はどうなのでしょうか。なかでも、50代の転職を考える人を取り巻く状況は良いのか、悪いのか……。

国家資格キャリアコンサルタントとして、これまで5,000人以上の転職サポートをしてきた安藤真規子さんに、中高年の転職の実情について全3回にわたり本音トークを展開していただきました。その第1回をお送りします。

<プロフィール>

安藤真規子

安藤真規子(あんどうまきこ)さん/株式会社Human&Mind代表、キャリアコンサルタント

立教大学法学部卒後、株式会社リクルートにて営業・広報・プロモーション・イベント企画の仕事に従事。2010年に独立、転職エージェント「Human&Mind」を設立。国家資格キャリアコンサルタントとして転職をサポートするほか、研修トレーナーや広報・プロモーション支援活動、ライター業まで幅広く活躍。

コロナ禍で50代の転職希望者は増加傾向に

――まず、キャリアコンサルタントとしてどんな仕事をしているか教えてください。

 キャリアコンサルタントとは「職業選択や能力開発などに関する相談・アドバイスを行う専門職」のことです。2016年に職業能力開発促進法が改正されたことに伴い、国家資格となりました。※安藤さんのようにもともと同等資格を有していた人は、登録手続きで国家資格に移行。

私の場合は有料職業紹介事業者の許可も受けていますので、転職希望者の相談を受けて企業とのマッチングを行い、求人を紹介しています。また、その方のスキルの棚卸しや能力を引き出せる職種は何かを提案したり、面接や履歴書について具体的なアドバイスを行ったりすることもあります。

――50代で転職を希望される方は実際、多いですか?

 以前は転職といえば20代~30代前半が中心で、タイムリミットはギリギリ35歳と言われていました。いわゆる「転職35歳限界説」です。理由は、35歳を過ぎると一気に企業側からの求人が減るから。実際、転職エージェントのなかには、中高年層の転職希望者に紹介できる求人情報はほとんどなく、面談も受けていただけないケースがあるようです。

しかし最近は、役職定年や早期退職制度を導入する企業も多くなっており、それに伴って転職を考える中高年が増加。人生100年時代と言われるなか、50代になってから、働く条件を向上したい、あるいはできるだけ長く働ける仕事に転職したいと希望する人も多くなったと実感しています。

最近は50代の中高年層に特化した転職エージェントも誕生しています。弊社でも、50代の転職をサポートする機会が確実に増えています。特にコロナ禍においては、給与カットや降格などに直面し、転職の相談にいらっしゃる方も多いですね。

50代向け転職マーケットの動向は

――転職希望者が増えるなか、企業からの求人状況はどうでしょうか?

 需要は増えても、供給はなかなか増えていきません。実際のところ、50代の転職は市場的にかなり厳しいものがあります。もともと中高年層向けの求人は少なかったのですが、コロナ禍で全体的に採用人数を控える傾向が見受けられ、特に50代の求人は激減しているのが実情です。

――有効求人倍率からも、厳しい状況は見て取れますね……

 はい。有効求人倍率は2019年4月に1.63倍でしたが、コロナ禍により2020年9月には1.03倍まで下落しました。現在は少しずつ回復傾向にあるものの、2021年5月時点でまだ1.09倍です。※厚生労働省『一般職業紹介状況(職業安定業務統計)』より。

年代別に見てみると、34歳以下が1.33倍に対して、35~44歳は0.95倍、45~54歳は0.64倍。やはり中高年層にとっては厳しい状況が続いています。※厚生労働省東京労働局『関東労働市場圏有効求人・有効求職 年齢別バランスシート(一般常用)令和3年3月分』より。

――それでも、中高年層の転職は積極的に進めるべきでしょうか?

 転職の理由にもよりますが「まずは慎重に進めてほしい」というのが私の答えです。例えば「年収が下がり、部下にも抜かれ、もう辞めたい」などと後ろ向きの理由であったり、「転職すれば何か良いことがあるかも」程度の軽い考えだったりするなら、いったん立ち止まってじっくり検討してほしいですね。

なぜなら、大手企業の課長クラスでも書類選考がままならないのが実情であり、前向きな動機や転職への覚悟がないとメンタル的にもたないからです。

“50代転職組”にとって、コロナの先にチャンス到来!?

――50代での転職を進めるうえで重要な「前向きな動機」とは?

 人生100年時代とすると、50歳は人生の折り返し地点。一昔前、50歳といえばあと10年もすれば定年を迎え、転職などは考えられなかったかもしれません。しかし今は、高年齢者雇用安定法によって定年は65歳まで引き上げられ、企業側にはさらに70歳までの就労機会確保が努力義務とされています。

今の時代、50歳の人は70歳まであと20年働くだけではなく、さらに頑張って30年後の80歳まで働きたいと考える人も少なくはないでしょう。

実際、私も40代半ばで独立しキャリアコンサルタントとなりましたが、その理由は「この先もできるだけ長く働ける仕事に就きたい、キャリアコンサルタントならば80歳でも、90歳になっても健康であれば働ける!」と思ったのがきっかけでした。

このように前向きな動機であれば、50代での転職活動も明るく乗り越えて行けるのではないでしょうか。

――コロナ後は「50代の転職」にも明るい兆しが見えてくる?

 企業の経営者たちはすでにコロナ後の世界を見据えて動き出しています。逆に、コロナをチャンスと捉え、事業を改革・拡大している企業もありますよね。今後、世界は急速に変わっていくと思いますが、例えコロナ禍が収束したとしても、何もかもがコロナ前に戻るというわけではありません。

私たちは、あらゆることがリモートや在宅勤務でできることに気づき、会議や営業活動、セミナーやイベントでさえもオンラインで何ら支障がないことを知りました。そしてIT技術も一気に進歩しています。単純作業やキャリアの浅い方でもできるような仕事は、今後、ITやロボットに置き換えられていくことになるでしょう。

そういう意味で、以前は若い人ほど転職市場で引く手あまたでしたが、コロナ後の未来は50代にもチャンス到来!ITやロボットにはない豊富な経験と高いスキルを持った50代の転職マーケットは、今までにないほど活性化するかもしれません。

中高年の転職事情を把握することからスタートを

転職業界の中心にいる安藤さんのお話は、50代の中高年がおかれた現状をよく理解できるものでした。

厳しいなかにも、ほのかに明るい兆しがも見える50代の転職市場。まずはこの状況をしっかりと理解して受け入れ、転職を成功させる一手を考えてみませんか。

次回は「50代の転職を成功させるポイント」について引き続き安藤さんからお話いただきます。

▶【50代の転職 賢人インタビュー】キャリアコンサルタントが語る② 転職を成功に導く秘訣とは

【50代の転職 賢人インタビュー】キャリアコンサルタントが語る③ 年収アップする「コアスキルの棚卸し」のポイント


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