2020
01/20

50代からが断然面白い!人生100歳時代と聞くと、正直気が重くなる人への処方箋【Vol.8】三日坊主の薦め


人生100歳時代と聞いて、心躍る人はなかなかに少ないのでは。

ということで、ここはそんなあなたのために、現在進行形のシニアライフ(この言葉もあまりそそりませんが)から見えてきた、あんなことこんなことのご紹介。

オリンピックイヤーです。お祭り好きとしてはたまらない一年の幕があけました。パチパチパチとついつい拍手をしてしまいます。

「変わるの? 変わらないの? 普段の生活」

と題して、人生100歳時代の“後編”(セカンドステージ)が、これまでの日常とどんな感じに変わるのか、変わらないのかを、昨年よりお伝えしています。今年はこちらのコラムの文体を「ですます調」に変えてみました。肩の力を抜いた感じをちゃんと表現しようかなと思いまして。

…というように、新年になると「今年は○○しよう!」といったいわゆる今年の抱負というのを、程度の差こそあれ立てる方が多いのでは。己を厳しく律する系で「痩せる」とか「資格を取る」とか、あるいはご褒美系とでも言いましょうか「行きたかったあの地へ旅する」とか「欲しいあれを買っちゃう」とか。

さて、ここで質問です。昨年の年始の抱負、実現しましたか? 「それは勿論!」という方は何よりですが、意外に多くの方が「あれ、何だっけ?」と昨年立てた目標自体を思い出せないのではないでしょうか?

「忘れる」の効能

齢(よわい)50歳を越えてくると、自身の記憶力の衰えを感じてくるものです。私の例で恐縮ですが、新しくお会いした方の名前が覚えられないのは“当たり前”として、長年の知人の名前が咄嗟に出てこないとか、以前購入した同じ書籍を何度も買ってしまうとか…。正月も松の内を過ぎれば、今年の抱負なんてすっかり忘却の彼方…というのも、決して珍しいことではありません。

しかしなのです。歳をとって記憶力が減退してくるのは、何かしらそれ相応のメリットがあるのではないかとも思うのです。いや、正しくは、思いたいのです。例えば、過去の手痛い失敗を忘れるというケースはどうでしょうか? 同じ失敗をしでかすという危険は当然あるわけですが、再度挑戦するという機会に躊躇することがなくなるかもしれません。何せ失敗の記憶が曖昧なのですから。あるいは、「またこれかぁ」という慣れから来る怠惰やモチベーションの低下を抑え、いつもフレッシュな姿勢を保つのに役立つかもしれません。過去のしがらみなども、綺麗さっぱり忘れてしまえば、意外にアグレッシブな自分になれそうです。

認知症の方への「対話型鑑賞プログラム」で感じる事

「対話型鑑賞プログラム」というのをご存知でしょうか? トレーニングを積んだファシリテーターを進行役として、グループ(10名前後)で絵画作品などをじっくり鑑賞しながら、自身で気づいたことや感じたことを話したり、一緒に参加している方の発言を聞いたりして、対話を楽しみ鑑賞を深めるというものです。

私が「忘れる」の効能などということを感じるようになったのは、ファシリテーターとしてこのプログラムに認知症の方やその家族の方とご一緒するようになってからです。「認知症」の方というと、表情や発言が乏しくなり、コミュニケーションをとるのが難しくなるというイメージがあったのですが、笑顔で快活に参加されるのを初めて見た時は、本当に驚きました。確かに、同じ話を何度も繰り返したり、発言の内容がわかりづらかったりということはありますが、何のてらいなく発言してくれる内容に、「なるほど、こんな作品の見方があるのだ」とこちらが教えてもらう事がほとんどです。

同じプログラムを、企業向けなどいわゆる“普通の大人”に実施した時にその差は顕著です。「間違ったら恥ずかしい」「他の人の発言を聞いてから答えよう」こういったためらいから、なかなか発言が出なかったり、当たり障りのないような発言が出たりするケースが多いのですが、認知症の方にはそれがないのです。かといって、子供に対して実施する時とも異なり(てらいない発言は似ていますが)、これまでの人生経験を踏まえた、こちらが感心してしまう発言が出てくるのです。歳を重ねた上での「忘れる」は、無用な気負いや気遣いをなくし、思い切り自分自身でいられるといった良さ、効能があるのではと…。

三日坊主の薦め

さて、正月の抱負の話でしたね。すっかり忘れるところでした…(笑)

「いやいや私は自分の立てた抱負はおいそれとは忘れませんよ」という方。そんなあなたも、あれほど固く「今年こそ!」と誓ったのに、気づけば早々に断念してしまい、自分の意志の弱さに愛想が尽きたなどという経験があると思います。いわゆる「三日坊主」は、誰にでもあるがゆえに“常用句”となったのではないでしょうか。でも、これも良いことだと思います。なぜなら、何かしら先ずトライし、続かなったけどチャレンジしたことには間違いないのですから。やろうと思って何もしない人のことは「三日坊主」とは言わないですからね。しかも当初の目標をちゃんと覚えているからこそ、意志の弱さを反省できるわけだし。

ポイントは懲りずにまたチャレンジできるかどうかかもしれません。継続できなかったという失敗体験が積み重なって、「どうぜやれないからやらない」となるのが一番つまらない。ここは一つ、「三日坊主」の体験を忘れちゃうってのが、良いのかもしれません。

齢(よわい)50歳を越えて記憶力の衰えを感じている皆様。「忘れる」は、新しいチャレンジに向けて、気力を補ってくれる天の計らいかもしれませんよ! え? 年末の「忘年会」で十分に忘れたけど? ……なるほど。

<変わること> “忘れる”ことが多くなる

<変わらないこと> やりたいことは、てらいがなければ、何度でも試せる

臼井 清
合同会社志事創業社(しごとそうぎょうしゃ)代表

1984年より情報機器メーカーで、マーケティングを中心に国内外で経験を積む。2014年、ビジネス創出やキャリア開発に向けた“学び”をプロデュースする「志事創業社」を設立。「幾つになっても進行形!」(Age100.ing)をキーワードに、様々な「チャレンジ」を応援中。最近では“アートシンキング”のプログラム開発等、活躍の巾を広げている。

 

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