2021
07/26

50代の転職で、履歴書に持病・既往症・基礎疾患を書く?書かない?


持病 基礎疾患 既往症 健康診断

最近「持病」「基礎疾患」「既往症」という言葉をよく耳にします。特に中高年は健康意識が高まり、病気の話題に敏感になるもの。さらに「50代で転職を」と考えている方にとっては重要な意味を持ちます。

40代・50代ともなれば、持病がある方も多いのではないでしょうか。そんな場合、履歴書の「健康状態」の欄にどう記載すべきか、採用選考に影響はないか、できるだけ隠すのがベターか……など、悩ましいところです。

そもそも「持病」とは何か、中高年が注意すべき基礎疾患の知識などにも触れながら、50代の転職でおさえておきたい「健康状態欄」の正しい書き方を解説します。

中高年に多い“生活習慣病”や“メタボ”は「持病」?

「持病」には定義がありません。医学用語ではないからです。心臓病や肝臓病などの慢性疾患、高血圧や糖尿病などの基礎疾患をはじめ、腰痛や偏頭痛、花粉症、胃腸が弱いといった状態も含まれると言えます。

「基礎疾患」は医学的に使用される言葉で「さまざまな病気を引き起こす基礎となる疾患」のこと。例えば、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める高血圧症や糖尿病、動脈硬化などです。最近では、新型コロナウイルスワクチンの優先接種条件として厚生労働省が「基礎疾患」を定義し、注目されました。

また「生活習慣病」は食事・飲酒、運動など生活習慣が原因となる病気の総称で、高血圧症、高脂血症、糖尿病、痛風、肝硬変、など。完治・寛解したら「既往症」と呼べますが、なかには現代医学ではまだ難しいものも。

「メタボ(メタボリックシンドローム)」は心臓病や脳卒中のリスクが高い状態で、内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧症・高血糖症・高脂肪症のうち2つ以上当てはまる場合に診断されます。

以上のことから、生活習慣病やメタボは「持病」と言えます。だとすると、40代・50代になれば誰もが持病のひとつくらい持っていそうです。

50代によくある病気とは?

実際『令和元年 国民健康・栄養調査報告』(厚生労働省)には、以下の代表的な結果があります。

・「高脂血症有病者」の割合:30代5.0%,40代21.1%,50代36.7%

・「糖尿病が強く疑われる・可能性がある者」の割合:30代3.9%,40代9.2%,50代22.9%

・「糖質異常症(高脂血症)が疑わる者」の割合:30代7.4%,40代7.1%,50代17.1%

・「メタボリックシンドロームが強く疑われる・予備軍と考えられる者」の割合:30代10.5%,40代19.4%,50代27.2%

・「薬を1種類以上服用している者」の割合:30代4.3%,40代10.3%,50代27.2%

年齢が上がるにつれて病気のリスクもアップし、薬で治療中という人も多いことが分かります。薬の内容は「血圧を下げる薬」が最も多く、次いで「コレステロールを下げる薬」「インスリン注射や血糖を下げる薬」の順でした。

さらに、がんについて見てみましょう。『平成30年 全国がん登録罹患数・率報告』(厚生労働省)によると、「新たにがんと診断された数(人口10万人あたりの症例数)」は、30~34歳147.5、35~39歳205.9、40~44歳297.3、45~49歳409.1、50~54歳543.955~59歳780.6というように、こちらも年代が上げるごとにリスクが高まることが分かります。

これらを踏まえ、「50代の転職」において健康状態への言及は避けて通れない課題と言えます。

履歴書に持病・既往症・基礎疾患を書く必要はない

では、履歴書の健康状態欄にはどのように記入すればよいのでしょうか。

例え持病があったとしても、「これから応募する職種で、現在、業務に支障をきたすような状態にない」ならば特に明記する必要はありません。

持病だけでなく、過去に患った既往症も現在治っていて仕事に影響なければ、履歴書で触れる必要はありません。健康状態欄には「良好」と書くだけで構わないのです。

一方、配属や仕事内容によって支障をきたす可能性がある場合はむしろ正直に書くことが大切です。具体的な病名まで書く必要はありませんが、例えば

・「持病のため月1回の通院時に早退を希望しますが、その他の業務に支障ありません」

・「腰の持病があり、重い荷物を持つなどの作業ができませんが、事務に影響はありません」

というように、前向きな一言を添えると好印象です。

注意が必要なこともあります。実は、事業主が従業員を雇用する際は「雇い入れ時健康診断」を実施することが労働基準法衛生規則第43条に義務付けられているのです。検査項目は既往歴、自覚症状、胸部エックス線検査、血圧や血糖の測定、肝機能検査など。検査時期は採用後、働き始める直前または直後とされています。

もし病気を隠していたとしても、この健康診断で発覚する可能性が高いことは覚えておきましょう。

健康を理由に不採用となることは基本的にない

健康状態欄に持病を記入する際、不安なのがやはり不採用結果。

厚生労働省は「公平な採用選考」を求める通達を出しており、法的拘束力はないものの、企業側としても基本的には健康上の理由で不採用としにくい状況があります。

前出の「雇い入れ時健康診断」も、健康診断の目的は採用後の労働者の健康管理や適切な配属に役立てるものであり、厚生労働省は企業側に対して採用選考へ活用しないよう求めています。

50代での転職は、20代・30代の若者と比べれば健康面で確かに劣勢です。しかし、中高年にはそれを大きくカバーする経験値やスキルがあります。これを武器に、例え持病があったとしても隠さず堂々とした姿勢で臨みたいものです。

病気経験を強みにするくらいのたくましさを持とう

履歴書には、健康状態を書く欄がないタイプもあります。JIS規格の履歴書にも健康状態の欄はありません。そのため健康状態を書かなくても済むタイプを選ぶのもひとつの方法です。しかし、中高年だからこそ元気で働ける自信があるならばアピールのために健康状態欄がある履歴書を選び「極めて良好」と胸を張りましょう。

逆に持病や既往症がある場合も隠さずに書くことでメリットがあります。採用後に自分が気持ちよく働ける環境づくりに繋がったり、大病を乗り越えた人間力を印象付けられるでしょう。ぜひ前向きにチャレンジしてください。


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