前回の「副業・兼業の可能性」か…
みずほ総研「副業・兼業の可能性」から読み解く ミドル・シニアの未来【現状編】
話題になったリンダ・グラットン著「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」。2007年生まれの日本人は約50%の確率で107歳まで生きる、という推計が紹介されています。
人生100年時代に向け、ミドル・シニア世代の働き方やキャリア形成はどのように変化していくべきなのでしょうか? みずほ総研のレポートから前半と後半に分けて読み解きます。 まずは副業や兼業の現状について紹介しましょう。
企業の副業に対する意識
みずほ総研の資料によれば、企業の多くは依然として副業に対して慎重な姿勢を見せているようです。 「副業・兼業の許可する予定はない」と回答した企業の割合は全体の75.8%に上っていて、その理由もさまざまにあげられています。
副業・兼業を許可しない理由としては、「過重労働となり、本業に支障をきたすため」が最も多く、「労働時間の管理・把握が困難になる」や「環境の他の従業員の業務不安が増大する懸念があるため」が続いています。労務管理が困難になることや、なんとなく不安、といった感覚が副業許可のストッパーになっているのがわかります。
労働者の副業に対する意識
企業は副業に対して慎重な姿勢を見せていますが、働く側に注目してみると、副業を前向きに捉えている方が多いようです。今後「副業・兼業を新しく始めたい」または「機会・時間を増やしたい」と前向きに考えている人は約4割にも上っています。
副業・兼業を希望する理由で最も多かったのが「収入を増やしたいから」。できれば収入を増やしたい、という思いは自然なことですが、収入以外の目的として「活躍できる場を広げたい」、「人脈を構築したい」、「組織外の知識や技術を取り組みたい」といった理由が挙がっています。
副業・兼業の現状
同資料によれば、実際に副業をしている人の中で本業とは異なる産業で行っている割合は約7割に上ります。建設業や製造業では、副業は他の産業で行っている人の割合が約8割。一方で、農林業、教育・学習、医療・福祉業においては同じ産業で副業をしている割合が多い傾向がみられます。
副業の産業別では、男女で異なった特徴が出ています。男性の副業先として多いのが農林業であり、女性の副業先としては卸売・小売業や医療・福祉業。副業を行う所得階級層についても男女で異なる特徴が見られ、女性は本業での所得が低い層で副業を多く行っているという傾向があり、所得の補填が副業の目的であると考えられます。
男性の場合は、高い所得層においても一定の副業者が存在しており、労働者自身のスキルアップや資産を活用などが理由で副業を行っていると推測されます。
セカンドキャリアのための副業・兼業
同資料の年齢別賃金カーブを見てみると、50歳頃をピークに賃金は減少傾向にあります。外部環境が目まぐるしく変化しており、自らのスキルが環境に合わなくなるスピードが速まっていることも一因として考えられます。
一方、企業が倒産するまでの平均寿命は2017年時点で23.5年となっており、人の寿命が延びているのに反して、企業の平均寿命は短縮しつつあるという分析もあります。
今後は、労働者が一つの会社のみで職業人生を終えることは無くなっていくでしょう。人生が長くなる分、セカンドキャリアについてしっかりと設計する必要がある時代になっていきます。資格の取得やスキルアップのための継続的な取組みは、所得を維持するという経済的な意味でも重要になってくると予想されます。
「人生100年」という長いスパンを考えると、働き方や仕事の内容も自ずと変わってきます。「二毛作」や「多毛作」、「セカンドキャリア」という考え方が必要な時代になっていくのか もしれません。
複業・副業はミドル・シニア層の方にとって所得の補填だけでなく、今まで培ってきた自分のスキルや経験を活かして、次のキャリア を始める良いきっかけになります。長く続く人生100年時代を見据え、いきいきと働いていくためにも複業・副業を検討してみてはいかがでしょうか。次回は、副業・兼業の将来の展望について紹介していきたいと思います。