2021
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長く続けたいなら50代転職で「事務職」を目指す! 年齢&未経験の壁を突破しやすい事務の種類と資格はこれ


事務職 資格

人生100年時代。50代で転職したとしても、この先、まだまだ長い職業人生が続きます。やりがいを持って、できるだけ長く働くためには、このタイミングで新たな職業にチャレンジするのも選択肢のひとつです。

そんななかで注目したいのが、老若男女問わず人気が高い事務職です。50代で、しかも未経験での転職は難関ではありますが、可能性はゼロではありません。

ひと口に事務といっても各種あります。50代未経験者が目指すならどんな事務がいいか、採用率をアップするためどんな資格を取得すればいいかをガイドします。

 50代未経験で事務への転職は叶う? まずは有効求人倍率をチェック

事務職(内勤)は新卒や若い世代の転職者にも人気が高く、50代にとってはたとえ経験者だったとしても狭き門です。

それは、以下の有効求人倍率を見ても明らかです(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年8月分)」より)。

・一般事務…0.25倍(総務、人事、庶務、企画・調査、受付・案内係、秘書、電話応接、医療・介護事務など)

・事務用機器操作…0.29倍(PCオペレーター、データ入力係など)

・会計事務…0.55倍(電気・ガス料金などの徴収係や支払窓口事務、銀行等窓口係、経理事務、予算係、財務事務など)

・営業・販売関連事務…0.75倍(営業事務、貿易事務、金融・保険事務、外注・仕入係、販売係など)

全職業の平均は1.07倍なので、いずれも平均を下回っています。

そんななかでも、業種によっては以下のように1倍を超えるものもあります。

・生産関連事務…1.4倍(生産現場の工程管理や建設工事現場事務、検収・検品・在庫管理係、運送・出荷事務など)

・運輸・郵便事務…1.78倍(駅改札・空港旅客係、貨物受付係、鉄道・タクシー等の運行管理、郵便事務員など)

建設や輸送など人手不足が深刻な業界は、事務職においても高い求人倍率を誇ることがわかります。

ミドル・シニア世代にとって、体力的なことを考えても、今後長く続けていける職種として内勤(デスクワーク)中心の事務職はとても魅力的です。そこで、未経験者であっても採用の道が開けるよう、人手が足りていない業界に絞ったり、より専門性のある事務に目を向けたり。そして、即戦力となるために必要な資格を取得することも重要です。

「経理事務」を目指して、日商簿記検定2級、できれば1級を取得

お金の出入りを把握・管理する経理事務は、企業の規模に関わりなく、なくてはならない存在です。ですが、今後はAI化によって人員削減が見込まれます。特に単純な会計業務はAIに置き換えられると言われていますが、業界・企業ごとの特殊な状況に応じた高度な経理は“人間しかできない業務”として残っていくでしょう。

経理事務に役立つ資格は簿記資格で、日本商工会議所が主催する「日商簿記検定試験」がスタンダードです。50代転職で即戦力となる高度な経理スキルとなると2級は必須です。さらに上の、“経営管理のプロフェッショナル”“公認会計士、税理士など国家資格への登竜門”とされる1級を持っていれば、未経験だとしても採用担当の目に留まるでしょう。

以下はそれぞれの級の概要/合格率(日本商工会議所発表、2018年6月~2021年6月の結果 ※回により大きく差があります)/大手資格スクールによる勉強時間の目安です。

・3級…基本的な商業簿記(商品売買業を対象)を修得/28.9~67.2%/100時間

・2級…高度な商業簿記、工業簿記(製造業を対象)を修得/8.6~28.6%/300時間(※1)

・1級…極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得/8.5~13.5%/600時間(※2)

※1)通学・通信講座受講の場合、簿記3級保持者で150~250時間、初学者で250~350時間

※2)通学・通信講座受講の場合、簿記2級保持者で500~700時間

「貿易事務」を目指して「TOEIC」700点以上「貿易実務検定」B級以上を取得

貿易事務は、輸出入に関する書類作成から運送便手配、納入管理などを行う、専門色の高い職種です。大手商社やメーカーなどのほか、最近は輸出入を手掛ける中小の企業もあり、需要は大きいと言えます。

こちらも単純な書類作成はAI化されていきますが、外国人との交渉、出荷・納期調整といった能力の高い貿易事務にしかできない仕事はなくならないでしょう。

貿易事務には、貿易に関する知識、英語でのコミュニケーション力が必要になります。そこで、以下のような資格を取得しておくと、採用率アップが期待できます。

●「TOEIC」700点以上を目指したい

貿易事務は英語で特定分野の会話をしたり、読み書きもできなければならないため、最低でも700点くらいは持っておきたいところです。TOEICの平均スコアは608.3点(2021年9月実施)ですので、平均よりも高いスコアが求められます。

●「貿易実務検定」は最低B級、できればA級を

貿易実務検定は、貿易実務のエキスパートとしての能力・知識を客観的に測る検定試験で、日本貿易実務検定協会が実施。C~A級まで3段階あり、履歴書に記載するならB級以上。A級を取得しておけば、有利に働くでしょう。

以下はそれぞれの級の概要/合格率(日本貿易実務検定協会発表、直近の試験のもの)

・C級…定型業務をこなせる基礎的なレベル。試験内容は、貿易実務、貿易実務英語/65.8%

・B級…貿易実務経験者の中堅層レベル。より高度な貿易実務・貿易実務英語、貿易マーケティング/52.8%

・A級…貿易実務で高度な判断業務を行うことができるレベル。試験内容はB級と同じだが、内容はさらに高度になり、「貿易税務」「英作文」なども加わる/38.7%

「宅地建物取引士」を取得して不動産営業所などで「宅建事務」の仕事に就く

不動産屋でお客に重要事項の説明をし、重要事項説明書や契約書等への記名押印を行う……この業務を行えるのは、国家資格である「宅地建物取引士」(以下、宅建士)を有するものだけと法律で定められています。

宅建士の資格を有する不動産事務のことを「宅建事務」と呼びます。通常の事務作業に加え、宅建士の仕事も行えるので、重宝がられます。また、ひとつの不動産事務所でスタッフ5人につき1人以上の割合で宅建士を置かなければならない設置義務があり、これも宅建士の資格を有する事務が採用されやすい理由です。

宅建士の資格試験は、不動産適正取引推進機構によって毎年10月に実施。2020年10月時の合格率は17.6%です。

試験内容は、宅建業法、権利関係、法令上の制限、税金その他の4項目から出題。大手資格スクールによると、勉強時間の目安は200~300時間となっています。

「メディカルクラーク」や「診療報酬請求事務能力認定試験」を取得して「医療事務」に!

 医療事務は、カルテ管理やレセプト・会計業務のほか、受付・案内、クラーク(診断書作成など医療従事者の事務作業の補助)まで、幅広い業務を行います。事務能力のほか多少の医療知識、患者とのコミュニケーション力が求められます。求人に際し、年齢・経験不問とするケースも多く、50代転職者にとっては挑戦しやすい職種と言えます。

医療事務になるために資格は必須ではありませんが、人気職種で倍率も高いため、少しでも採用を有利に進めるためには資格を持っておくとよいでしょう。医療事務に役立つ資格は各種ありますが、知名度がありスタンダードとなっているのが、以下のふたつです。

メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)

日本医療教育財団が1974年から実施している技能認定で、医療機関での受付業務や診療報酬請求事務業務のスキルを証明します。試験は毎月実施。医科と歯科があり、医科のここ数年の合格率は70~80%。試験では、医療事務の基礎的な学科試験のほか、窓口対応と診療報酬明細書の点検の実技試験も行われます。

診療報酬請求事務能力認定試験

日本医療保険事務協会が、医療事務のメインの仕事である診療報酬請求事務作業の資質向上のため実施する、厚生労働省認定の資格です。試験は年2回実施。医科と歯科があり、医科のここ数年の合格率は28~43%。試験では、学科に加え、カルテから手書き方式で診療報酬明細書(レセプト)を作成する実技試験も行われます。

より専門的な建設業や農業に特化した簿記資格を取得して採用率アップを狙う

 建設業は、経済状況によって浮き沈みの激しい業界で、コロナ禍による影響も深刻でした。しかし、コロナが落ち着けば中断していた案件が一気に再開。2025年大阪万博に向けた建設ラッシュのほか、老朽化したインフラの維持管理や防災対策への需要も今後ますます高まるでしょう。

一方、衰退をたどっていた日本の農業ですが、昨今は農業経営の法人化、企業の農業参入などの増加で、明るい兆しが見えています。

どちらの業界も今後盛り上がりが予想され、それぞれの業界に特化した経理事務の必要性も大きくなると見込まれます。

建設業経理士

「建築業経理士」は、建設業界独自の会計業務やルールに対応できるスペシャリスト。国土交通大臣登録を受けた建設業振興基金が実施する「建設業経理士検定」の1・2級に合格すると、建築業経理士に認定されます。合格率は、2級41.1%、1級は財務諸表21.9%・財務分析20.8%・原価計算11.2%(3科目に合格することが必要)。ちなみに、企業が公共事業入札に参加する際、建設業経理士の在籍数が加点対象となり、これも有資格者が優遇採用される理由です。

農業簿記

農業経営が多様化する中、現代的な農業経営の確立に向け、全国農業経営コンサルタント協会が監修する検定試験。試験を実施するのは日本ビジネス技能検定協会で、2014年から年2回行われている比較的新しい資格です。3~1級までありますが、農業法人や農業関連企業へ事務として転職を希望するなら、1級(財務会計・原価計算・管理会計の知識を有する)を目指したいところで、直近の合格率は32.1%です。

今からでもしっかり勉強&資格を取得すれば、希望職種への道もきっと開けるでしょう

 50代未経験の場合であっても、足りない経験値はある程度、資格取得でカバーできます。

資格取得のためには学習時間をしっかり取る必要があります。「これから勉強なんて……」と諦めたら、そこで終わりです。今から勉強に取り組めることを思い切り楽しむつもりで挑戦してみましょう。

そして、資格を取得し、採用が決まってからも、勉強は継続必須です。今後、AIの台頭によって、簡単な入力・計算作業などの事務はどんどんAI化されるでしょう。とはいえ100%機械に任せきることはありえませんし、AIを使いこなせる内容の理解は必要とされます。そのため、より高いスキルを目指し、常に勉強を続けることが大切になるのです。


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