「55歳の退職ストーリー」前回…
副業には起業が近道かもしれない2つの理由
本業が会社員のサラリーマンが企業に雇われるかたちで副業を行う場合、労働時間の通算が大きな問題に。また、副業所得が年間20万円を超える場合は確定申告も必要となり、手間がかかってしまいます。その解決策のひとつが、起業や個人事業主として働くこと。今回はそのメリットを2つご紹介します!
理由その①:労働基準法が適用されないので思う存分働ける
本業・副業で企業に雇用される場合は労働基準法が適用され、全ての労働時間が通算されます。副業を行うと通算の労働時間が「1日8時間、週40時間」という法定労働時間を超える恐れが。そこで企業側は事前に「36協定」の締結や、割増賃金の支払いをする必要が出てきます。この手間が企業側のネックになり、副業解禁が進まない要因のひとつです。
しかし、自分で起業して取締役や個人事業主になって副業を行う場合、労働者ではないため労働基準法は適用されません。つまり被雇用者に適用される労働時間の法的な制約はなくなり、副業の労働時間は制限無し。思う存分活躍できます。
ただし、働き過ぎや偽装請負に注意が必要
ただし、働き過ぎて心身の健康を損ねないよう、自分自身でコントロールすることが大切です。他にも、副業を始める際には本業の就業規則で副業が禁止されていないか、また形式的には業務委託の仕事でも偽装請負になっていないかの確認も重要。偽装請負については仕事を受けた側も罰金が科せられることがあります。
因みに偽装請負とは、主に「本来は労働派遣に分類される働き方なのに業務委託という形で仕事をすること」です。一例を挙げると、システムエンジニアなどに対し、クライアントが直接指示を出して業務にあたらせる場合、業務委託として行うと偽装請負に該当します。
請負とは、受注側が仕事を完成させることを約束し、発注側はその成果に報酬を支払う契約の形。納期までの仕事を完成させられるなら、その方法などは受注側の裁量に任せられます。ここで発注側からやり方に口を出すと、「指導命令を行った」とみなされ請負という形が成立しなくなってしまうのです。
理由その②:税制上の特典が受けられる
時間の制約が取り払われるメリットは嬉しいけど、自分で経営者になってちゃんとやっていけるか不安もありますよね。そこで第二のメリット、金銭面に注目してみましょう。
副業の収入から経費を引いた所得が年間20万円を超えた場合は確定申告が必要ですが、起業したり個人事業主として副業をする場合はさらに税制上の特典が受けられます。
例えば個人事業主の場合、収益を上げるためにかかった費用は経費として計上可能。家族に給与を支払っている場合、その給与も計上できます。また、損金申告申込書を提出すれば副業の赤字を3年間繰り越せるだけでなく、本業と損益通算ができるため、税金の還付を受けられることもあります。
さらに屋号で事業用口座が開設できるのでお金の管理が明確になる上、青色申告を選択すれば65万円の特別控除を受けられ節税となります。税金が安くなるということは、雇用されて同じだけ稼ぐよりも収入面で有利になるわけです。
まずは副業でやりたいことは何か、事業は継続可能かなどをしっかり考えてみましょう。目的が明確ならば、ミドル・シニア世代が起業して経営者や個人事業主になることは、副業・複業・兼業への案外近道かもしれません。