「55歳の退職ストーリー」前回…
ん?何かおかしくない?副業の時間と収入の関係
当サイトでは、副業や複業の時間管理についてさまざまな視点でお伝えしてきました。今回は角度を変えて「副業の時間と収入の関係」という視点から見ていきます。
突然ですが、下記のような事例をあなたはどう思いますか?
ケース①
体力維持のため週末ジムに通っていたAさん。支払う入会金や月額の利用料は年間で考えるとかなりの出費となります。そこでジムの代わりに肉体労働系の副業を週1日で始め、収入を得ながら体を鍛えています。
ケース②
憧れだったピアノを習い始めたBさん。レッスン料を払い週に1日、熱心に通っていました。しばらくすると先生の補助として初級の生徒を教えるレベルにまで到達。現在は副業として収入を得ながらピアノの指導をしています。
ケース③
自己研鑽のために中小企業診断士の資格を取得したCさん。終業後、スクールに通い見事合格。試しに知人の会社の経営状況を診断・アドバイスをしたところ大変喜ばれ、副業として業務委託契約を結ぶことに。経営会議に参加し、学んだ知識を活かし収入を得ています。
上記のように、これまで労働時間外にお金を払って趣味や自己研鑽のために行っていたものが副業に発展することがありますが、実は副業禁止の企業から見ると全て就業規則違反。やっていることはほぼ変わらないのに、無収入ならOK、報酬を得るとNGになります。
時間の観点から見ると、副業の会社に労働者として勤務する場合、副業と本業の労働時間は通算されます。そのため通算した労働時間が「1日8時間、週40時間」という法定の労働時間を超える場合は、事前に会社と労働者間で「36協定」を締結していないと違反になります。また、法定労働時間を超える労働をした場合、会社側は割増賃金を払う必要が出てきます。
もちろん、こうした決まりは労働者を守るために存在しているものです。しかし実態として、いわゆるブラック企業では、そもそも労働時間を正しく記録させないようにするなどの違法行為も横行していています。そういった現状を見るに、単純に労働時間を縛るだけでは労働者の健康を守るには不十分ともいえるでしょう。
生活時間の中の余暇や自由時間が、趣味や自己研鑽で腕を磨いた結果、収入を得られるようになったと同時に労働時間に変わってしまい、本業の就業規則や労働法に違反してしまう。収入のない自由な時間が、同じようなことをやっているのに収入があるために労働時間として管理の対象になってしまうのです。このことによって副業が制限されてしまうとしたら、本末転倒な話ですよね。
副業・兼業の労働時間管理のあり方について、政府でも検討が始まりました。仕事の内容や働く場所が多様化している中で、そもそも時間で労働を管理することに大きな意味があるのか疑問です。働いた時間だけではなく、何ために何をしたかという中身にも注目するべきではないでしょうか。その上で、労働者が違法に長時間労働を強いられる問題に対しては、新たな解決策を考えていく必要があります。
働き方改革が進んでいますが、政府や企業側に押し付けられる論理ではなく、もっと働く側の意志を尊重し、働きたいこと、やりたいことを自由に選べるものになってほしいものです。